更新日 2013.9.18
1インチ望遠鏡の乙号が発売されてから、わずか4ヶ月後に甲号を出し、さらに1年足らずの間に再び1インチ望遠鏡の新製品を出します。『科学画報』の昭和3年1月号に、つぎのような広告が出ました。
↑(写真)『科学画報』昭和 3年 1月号の広告
「新普及型 五藤式卓上天体望遠鏡」という大見出しで、「先に五藤式天体望遠鏡甲乙両号を発表し、天文界にセンセーションを巻き起こしたが、我社はこれに満足することなくあらゆる研究努力の結果、ようやく完成したのがこの卓上天体望遠鏡だ。価格は1台わずか15円、性能は優秀でいろいろな特徴がある。1台を座右に備えて宇宙の神秘を極めんことを望む。」とあります。ここで、先の甲号や乙号に倣って整理してみましょう。
【卓上型】
対物レンズ :鏡径30mm、有効径25mm、f=800mm
対物レンズ枠:木製で黒のエナメル塗装
鏡 筒:紙製で白のエナメル塗装
鏡筒の取付け:鏡筒バンド
接眼保持部 :木製で黒のエナメル塗装
焦点調節装置:引抜式
架台及び三脚:木製で、脚を架台に木ネジで固定
付 属 品:ラムスデン式接眼鏡、サングラス
定 価:15円
つまり、価格が30~40円では、学校では購入できるが、一般のアマチュア天文家には高すぎて、とても手が出ません。そこで、鏡筒は乙号のものを使い、架台と三脚を木製にして更なるコストダウンを図り、乙号の半額という破格の価格で販売したのです。
この1インチ望遠鏡の「卓上型」は、架台と三脚を木製にし、脚を格納箱に入るように短くしたので、「卓上型」というネーミングにしたのでしょうが、そのために、思わぬ弊害が出ることになります。
これは、『科学画報』の昭和3年8月号に掲載された1インチ望遠鏡の「卓上型」の広告です。
↑(写真『科学画報』昭和 3年 8月号の広告
最初の行に、「新たに天頂観測用ダイヤゴナルプリズムを付す」とあります。これは、三脚の足をあまりにも短くしたので、天頂付近を見るとき、地面に頭が着くようにしないと観測できません。これでは不便なので、急遽ダイヤゴナルプリズム(天頂プリズム)を付けることにしたのです。
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