連載 星夜の逸品 -児玉光義-

ドームなび GOTO投映支援サイト

吉田茂の長男健一氏の愛用した望遠鏡 3/6
~天文家垂涎の名機「ウラノス号」~

更新日 2013.11.19

昭和27年のカタログにあるウラノス号

ここに、不思議なカタログがあります。明らかに戦後に発行されたカタログですが、ウラノス号の挿絵が、何故か、昭和3年に発売された「ウラノス号1型」の絵になっているのです。挿絵には、対物レンズ枠に露帽がなく、架台は三脚を取付ける部分が飛び出した武骨なものです。また、三脚は木製の二段伸縮のものに描かれています。
しかし、説明文では「堅牢木製無伸縮三脚・・・1組」となっています。これは、どういうことでしょうか。世界大戦があり、昭和20年5月25日の東京大空襲では三軒茶屋の自宅も全焼してしまいました。従って、カタログに使用する写真なども失われてしまい、古い挿絵を使わざるを得なかったのでしょうか。

(写真)昭和27年のカタログ

↑(写真)昭和27年のカタログ

何とも不思議です。ところが、うれしいことにこのウラノス号の写真が今も残っていました。

(写真)残っていたウラノス号の写真

↑(写真)残っていたウラノス号の写真

その写真を見ると、三脚は確かに無伸縮の直脚になっています。二段伸縮のものは、可動部分があるため多少ぐらぐらしますが、直脚はそういうことはありません。また、接眼部の焦点調節ハンドルのところに偏心メタルが使われていて、繰り出し時のぐらつきや硬さなどを細かく調整できるように改良されています。さらに、高度微動稈の鏡筒への取付け部分が、単純な「T字型」に変更されています。

(写真)焦点調節ハンドル部と高度微動稈の取付部

↑(写真)焦点調節ハンドル部と高度微動稈の取付部

(写真)対物レンズ枠、露帽、キャップ

↑(写真)対物レンズ枠、露帽、キャップ

それから、対物レンズ枠には「F=800mm、GOTO KOGAKU」と、焦点距離と社名が彫刻されています。露帽の形状は前のものと同じですが、キャップは真鍮製で、取手のない単純な形になり、外装は梨地のクロームメッキになっています。

(写真)標準付属品

↑(写真)標準付属品

付属の天体用接眼鏡は、[GOTO KOGAKU]と彫刻されたHM25mm、HM12.5mm、HM6mmの3種、地上用接眼鏡は、T30~AH40mmが付属しています。全体としては焦点距離が30mmの地上用接眼鏡ですが、一部を組み替えることによってアクロマート・ハイゲンの40mmになるというものです。その他、天頂観測用のダイヤゴナルプリズム、太陽投映機、サングラスが付属しています。 昭和28年4月の定価表によれば定価は36,000円で、これは、昭和27年のカタログに記載されている定価と同じです。この天体望遠鏡を「ウラノス号4型」と呼ぶことにします。

< 2.にもどる 4.にすすむ >

このページのトップへ