連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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望遠鏡最初の付属品 6/6
~世界的発明と称された『太陽投映機』~

更新日 2014.1.29

高級太陽投映機

平成18年(2006)5月10日のことです、K君からヤフオクに太陽投映機が出品されているという電話をもらいました。そこで、早速、入札してくれるよう頼みました。12日の夜、K君から太陽投映機が無事落札できたという連絡があり、15日に待ちに待った太陽投映機が届きました。それは、縦14cm、横18.7cm、高さ8cmの黒塗で小さな鍵のついた宝石箱のような箱に入った素晴らしいものでした。

(写真)高級太陽投映機の格納箱

↑(写真)高級太陽投映機の格納箱

(写真)高級太陽投映機本体

↑(写真)高級太陽投映機本体

高級太陽投映機本体は、すべて真鍮製で全長が145mm、重さ433gです。望遠鏡のドロチューブにねじ込むところは、外径が30.4φで、P=1/28のインチねじが切ってあります。これは、日本光学製の3インチ望遠鏡のドロチューブのねじ径かも知れません。五藤製の望遠鏡に付くようにするためか、重さ40gの真鍮製のアダプターが1ヶ付属していています。反射鏡は49.3φで厚さ10.3mm重さ50gの表面メッキのものと、49.3φで厚さ2mm重さ10gの裏面メッキのものが背中合わせに入っています。

(写真)高級太陽投映機各部の名称

↑(写真)高級太陽投映機各部の名称

最近の天体望遠鏡のドロチューブのねじ径は、ほとんど36.5φ、P=1.0ですが、五藤製の天体望遠鏡のドロチューブだけは、36.5φ、P=0.75を採用しています。従って、高級太陽投映機は、直接でも、付属のアダプターを使っても取り付けることができません。また、手許にある古い五藤式の天体望遠鏡にも、付くものがありませんでした。
ただ、昭和25年(1950)に作られたコメット号のドロチューブは、内径が同じでねじのピッチが違うだけなので、無理をすれば何とか付けられそうです。こうして付けてみたのがつぎの写真です。

(写真)コメット号に取付けられた太陽投映機

↑(写真)コメット号に取付けられた太陽投映機

早速、太陽を導入してみました。太陽の表面像を壁に映してピントを合わせるときは、望遠鏡のピニオンハンドルを回して行います。また、プレパラートを挿入して顕微鏡として使うときは、プレパラート用焦点調節リングを回転してピントを合わせます。
残念ながら、私がテストをしたときは、壁までの距離が近すぎたのか、ドロチューブの可動範囲内ではピントを合わせることができませんでした。太陽像の直径が数メートルになるような投映距離が必要なようです。

(写真)太陽投映機の投映レンズとモノセントリックの接眼鏡

↑(写真)太陽投映機の投映レンズとモノセントリックの接眼鏡

その太陽投映機の投映レンズは、ご覧のように3枚のレンズをバルサムで貼り合わせて1個のようにした、左右対称のレンズです。直径が25φで、光軸上の長さが17mm、コバの長さが13.5mmです。中央のレンズのコバの厚さは3.5mmですから、両端のレンズのコバの厚さはそれぞれ5mmということになります。
中央のレンズのコバの厚さが狭いということは、凸レンズと思われます。また、両端のレンズのコバは、中央のものよりも倍とはいいませんが、かなり広くなっていますので、これは凹レンズと考えられます。従って、このレンズは、モノセントリック接眼鏡のレンズと同じものと推測されます。
吉田正太郎著の『天文アマチュアのための 望遠鏡光学・屈折編』(平成元年 誠文堂新光社刊)によれば、「モノセントリック(単心)接眼鏡は、BK7の凸レンズを両側から重フリントSF2などの凹レンズで包んだ対称型ですから、歪曲が少なく、表面反射も少なくなります。惑星表面のようなコントラストの弱い目標物の細部を観察するのに有利です。モノセントリック接眼鏡は色収差や球面収差も少なく、F6ないしF5という明るい反射鏡に使用しても好成績です。有用な見かけ視界は直径30°くらい、ヒトミ距離は0.77fくらいです。」ということです。
ミッテンゼー型ハイゲン式接眼鏡の見かけ視界は約50°、ケルナー式は40°~50°、オルソスコピックは45°ですから、モノセントリックの視野はかなり狭いといえます。

(写真)高級太陽投映機を分解したところ

↑(写真)高級太陽投映機を分解したところ

ここで、高級太陽投映機の構造を簡単に説明します。上の写真は、太陽投映機を分解したところで、左から各々、①アダプター、②プレパラート挿入枠、③プレパラート用焦点調節リング、④投映レンズ枠、⑤投映レンズ、⑥反射鏡支持アームと反射鏡、⑦投映レンズ押えです。
②に③をねじ込みます。④を⑥の上の方の丸い穴の下の方から入れ③上の方から差し込みます。そして、④に付いている回転する駒のくぼみと、③のねじ穴を合わせてねじで止めます。④に⑤を入れ⑦で締めます。こうすると、③を回転すると②と③の間が長くなったり、短くなったりしてピント調整ができるというわけです。①は、必要に応じて②にねじ込んで使います。

今度、天気の良い日、投映距離を長くして再度テストしてみようと考えています。

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