連載 星夜の逸品 -児玉光義-

ドームなび GOTO投映支援サイト

里帰りした「組立キット」 3/5
~五藤式40×~80×天体望遠鏡「組立キット」~

更新日 2014.2.19

三人だけの天文倶楽部

中学に上がると、M君やT君とすぐに仲良くなりました。東京大学の糸川英夫博士が、しきりにペンシル・ロケットを飛ばしていた時代です。ところで、アルミ製の鉛筆用のキャップに、セルロイド製の詰襟用のカラーを細かく切って詰め、キャップの尻の方をペンチで締めます。そして、手製のランチャーに載せ、下からロウソクの炎であぶると、シューと白い煙を吐いて勢いよく飛び出すのです。われわれ3人は、夜な夜な郊外の墓場や田圃に集まり、自称ペンシル・ロケットを飛ばし、距離や高さを競って遊んでいました。
ところが、いつの間にかロケットの代わりに望遠鏡を持って集まるようになり、3人で天体観測をするようになりました。
T君は、裕福な造り酒屋の一人息子で、五藤光学製の天体望遠鏡を買ってもらったようです。五藤式40×~80×天体望遠鏡「組立キット」は、ブリキで鏡筒を作り、対物レンズ枠と接眼部、筒受けを取り付けるための穴を、金属用のドリルで開けなければなりません。また、架台と三脚を、今度は木工細工で作らなければなりません。そのためには専用の工具も必要で、素人にはとても無理です。

(写真)「組立キット」の作り方(表)

↑(写真)「組立キット」の作り方(表)

(写真)「組立キット」の作り方(裏)

↑(写真)「組立キット」の作り方(裏)

そこで、当時、メーカーで作ったものも販売していました。これが「ダイアナ」で、定価は8,500円、荷造り送料が400円でした。

(写真)「ダイアナ」の使用説明書

↑(写真)「ダイアナ」の使用説明書

口径こそ40mmと小さいですが、さすが色消しレンズで、自然な天体の色合いは素晴らしいものです。
やはり天体望遠鏡の対物レンズは、色消しでないとと思ったので、その後、80mmの単レンズを色消しレンズに替えました。そして、単レンズの鏡筒を友人のM君に譲り、三人だけの天文倶楽部は、中学校を卒業するまでつづきました。

< 2.にもどる 4.にすすむ >

このページのトップへ