更新日 2014.5.21
ところで、日本には、これまで天文学の入門書や部分的な解説書はありましたが、理論的に天文学全体を体系的に取り扱った専門書はありませんでした。その点、『現代天文学事典』では、天文学の基礎知識を体系的に学ぶことができました。しかし、さらに進んで、小惑星や彗星の暫定軌道を決定して位置推算(予報)をしてみようとか、食連星の光度曲線を分析してその軌道や両分星の大きさや形の情報を得てみようとか、また、日・月食の計算をして自分の観測地の食の予報をしてみようと考えたとき、『現代天文学事典』だけでは不十分でした。それで、あれこれ探しているとき、『現代天文学事典』の基になった本のあることを知りました。それは、「天文宇宙物理学総論」といって全部で12冊からなる本だといいます。そこで、神田の古書店街を探し回りました。
昭和40年代、神田の古書店は、朝8時から夜の8時までやっていて、日曜日も第1と第3日曜日だけが休みで、他は店を開けてしていました。当時、会社の休みは日曜日だけですから、日曜日の朝に出かけました。中央線で水道橋まで行き、白山通りを古書店を覗きながら靖国通りまで歩き、左に曲がって靖国通りを駿河台下の交差点まで歩きました。昼は、三省堂の地下のカフェで、よくカレーライスを食べました。
そして、「天文宇宙物理学総論」のうち、『恒星物理学』や『球面天文学』、『太陽系』などを、500円~1000円ぐらいの価格で買いました。当時は、今とは逆で、古本が巷にあふれ、天文学の本もたくさんありましたが、こちらは、懐が寂しくあまり買えませんでした。
それでも、『連星』や『銀河系』、『天体力学』、『星雲宇宙』などを買いました。内容が素晴らしく、『天体力学』によって彗星の暫定軌道の決定を行うことができましたし、『連星』によって食連星の光度曲線解析も勉強することができました。しかし、12冊あるはずの「天文宇宙物理学総論」が、上記の7冊以外はいくら探しても見つからないのです。あと3冊は、どのような本だったのでしょうか。
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