連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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戦前の「コメット号」 11/12
~数奇な運命を辿ったダイアナ号とコメット号(その1)~

更新日 2014.8.6

(写真)コメット号の経緯台

↑コメット号の経緯台

(写真)コメット号の経緯台の構造

↑コメット号の経緯台の構造

上の図は、分かり易いように多少誇張して描いてあります。つまり、鏡筒を上下させるためのボルトの軸がわずかなテーパーになっていて、この軸の入る筒受の穴と架台の穴もそれに合わせてテーパーになっています。実は、こうすることによって、架台と筒受が必要以上に強く締め付けられることがないように工夫されているのです。正に先人の知恵です。
昭和4年のカタログには、「架台の上下左右の回転部は最も円滑なる運動を要するものなるが本機では甚だ合理的な構造により理想的な滑動をなし、星を視野の中央に入れること容易である。」と書いてあります。
つぎは、木製三脚ですが、カタログには、「三脚の高さは伸縮し、望遠鏡の高さを五尺までなし得らる。」とあるだけです。しかし、この三脚にもいろいろと工夫がなされています。

コメット号の三脚の取付け部

↑コメット号の三脚の取付け部

木製三脚の足を、架台に取付けるためのボルトを入れる穴の外側に、写真のような金属の補強材がねじ止めされています。これは、ボルトを蝶ナットで強く締めた後、三脚を無理に開くと木製の足が彫れてガタガタになるのを防ぐためのものです。

コメット号の三脚の伸縮固定ねじ

↑コメット号の三脚の伸縮固定ねじ

また、三脚は最大で1.5mまで伸びますが、途中のどの位置でも確実に固定できるように、真ん中の足を外側の2枚の板で挟んで、摩擦を利用して止める仕組みになっています。勿論、外側の板がねじで押されても傷まないように、金属の板が貼ってあります。

コメット号の三脚の石突

↑コメット号の三脚の石突

木製三脚の足の先端には、写真のように小さな穴が開いています。本来はここに真鍮製の細い棒が埋め込まれていて、それを土に突き刺して三脚がしっかりと固定できるようになっていました。しかし、それが取れてありませんでした。

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