更新日 2014.7.23
ところで、昭和4年のカタログのコメット号は、対物レンズの口径が41mmで焦点距離が750mmでした。しかし、このカタログにはダイアナ号の記載はありません。また、昭和5年のカタログのダイアナ号は、対物レンズの口径が41mmで焦点距離が800mmでした。しかし、こちらのカタログにはコメット号の記載がありません。従って、対物レンズの口径が同じで、焦点距離がわずか50mmしか違わない2つの機種が、同時に存在したというのは何かおかしいですね。そこで、『子供の科学』昭和5年9月号のダイアナ号の挿絵と、昭和5年のカタログのダイアナ号の挿絵を比較してみました。
その結果、ご覧のように、同じダイアナ号でもまったく違う望遠鏡であることが分かります。『子供の科学』の挿絵の方は「卓上型」で、昭和5年のカタログの方は「野外型」です。しかし、卓上型の方の対物レンズの口径や焦点距離は分かりません。
そこで、もう少し雑誌広告を見てみることにしました。『科学画報』の昭和5年11月号に、やはりダイアナ号とコメット号の広告が半ページで掲載されています。
↑『科学画報』昭和5年11月号に掲載された広告
これを見ると、
ダイアナ号は、36mm優良色消対物鏡付
コメット号は、32mm優良色消対物鏡付
となっています。こうなると、何がどうなっているのかさっぱり分からなくなります。
しかし、これが「ダイアナ号」と「コメット号」の数奇な運命のはじまりだったのです。その話は、後日ゆっくりすることにして、色消の対物レンズを搭載した最初の天体望遠鏡は、
口径58mm、焦点距離800mm、「ウラノス号」
口径47mm、焦点距離800mm、「アポロン号」
口径42mm、焦点距離800mm、「ダイアナ号」
口径41mm、焦点距離750mm、「コメット号」
口径32mm、焦点距離800mm、「ヴィナス号」
の5機種だったと推測されます。
だだし、雑誌広告やカタログに記載されている対物レンズの口径は(有効口径と書かれている場合でも)、鏡の直径つまり「鏡径」で表されていることが多いようです。また、倍率ですが、雑誌広告やカタログの見出し等の場合、実際は40倍であっても、敢えて「50倍」と記すことが多くあてになりません。カタログや説明書に書かれた説明文を注意深く読むことが重要です。しかし、本当のことは、実物に当たって見るしか方法はなさそうです。そこで、今回は「戦前のコメット号」について少し詳しく調べてみたいと思います。
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