更新日 2014.10.29
これまでは、例えば『科学画報』の昭和5年11月号に掲載された「コメット号」のように、付属品が全部付いているものを定価55円で、付属品から地上用接眼鏡と天頂プリズムを除いたものを定価40円と言うように、機種名(愛称)は同じにして価格で差をつけてきました。ところが、今回はコメット号の付属品から地上用接眼鏡と天頂プリズムを除いたものを「スバル号1型」と、機種名(愛称)を変えたのです。つまり、昭和5年に定価55円だったコメット号をそのまま「コメット号」として定価13,000円で販売し、定価40円だったコメット号を「スバル号1型」として定価9,700円で発売するというのです。
また、コメット号の架台と三脚に、ウラノス号の口径58mmの鏡筒を載せ、ウラノス号と同じ付属品をつけたものを「スバル号2型」として、定価20,000円で発売したのです。ウラノス号は、ちょっと高価で買えないが、コメット号では物足りないという人々に歓迎されたのでしょうか。
また、鏡径が63mmの対物レンズの鏡筒を開発し、コメット号の架台と三脚に載せたものを「スバル号3型」として、より低価格で、より大きな口径の天体望遠鏡を望む人々のニーズに答えたのでしょう。ところで、組立用光学部分品の対物鏡のところに、
高級品58粍、F800粍、定価・・・・5,000円
普及型58粍、F800粍、定価・・・・2,400円
高級品42粍、F750粍、定価・・・・2,500円
普及型42粍、F600粍、定価・・・・・900円
とあり、また、天体用接眼鏡のところに、
ハイゲン型
9粍、12.5粍 各700円
10粍20粍 組合型 1,100円
ミッテンズウェー型
25粍、12.5粍、9粍 各1,000円
6粍 1,300円
サングラス
高級品・・・・・・・・・・ 300円
普及型・・・・・・・・・・ 200円
ガラスのみ・・・・・・・・ 100円
地上用接眼鏡
30粍(スバル用)・・・・・2,000円
20粍(普及型)・・・・・・1,300円
天頂用プリズム
スバル1型用20粍・・・・1,300円
仝 2型用25粍・・・・2,000円
とあります。
従って、はじめ「スバル号1型」を購入し、その後、スバル号用の30粍の地上用接眼鏡を2,000円で購入し、さらに、スバル号1型用の20粍の天頂用プリズムを1,300円で購入すれば、いつの間にか「コメット号」になっているというわけです。
また逆に、はじめ「コメット号」を購入し、使っている間に、地上用接眼鏡と天頂用プリズムが破損し、処分したり紛失したりして失われた場合、その時点からこの望遠鏡は「スバル号1型」になってしまうという、実に不思議な現象が起こります。
はじめに「スバル号1型」を購入し、つぎに口径58mmのウラノス用の鏡筒を購入して載せ替えると「スバル号2型」となり、さらに口径63mmの鏡筒を購入して載せ替えると「スバル号3型」となるという、出世魚ならぬ「出世望遠鏡」となります。冗談はさておき、清少納言が『枕草子』に「星はすばる・・・云々」と書いたおうし座の散開星団の名を冠した天体望遠鏡は、その後どうなったのでしょうか。
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