更新日 2014.9.24
↑組み合せ式接眼鏡の「実用新案公報」
これは、昭和23年に出願された「高低二様の倍率に使用し得る接眼鏡」の実用新案公報です。昭和25年5月26日に登録されています。1個の接眼鏡で、単に前後のレンズを1つ外すことによって、高低2つの倍率に使用できるという優れものです。ハイゲン式の接眼鏡2個の場合、4枚のレンズが必要ですが、これは、3枚のレンズで2個の接眼鏡と同じように使うことができるので、資材の節約にもなると説明しています。
それから、地上用接眼用T30~AH40mmというのは、そのまま使うと30mmの地上用の接眼鏡ですが、一部を組み換えると拡大鏡とAH40mmの天体用接眼鏡にすることができるというものです。
↑地上用接眼鏡を拡大鏡とAH40mmにする方法
上の写真の、最上段の状態のものから、⑥だけを外し、物体から15mmほど離して①の方から覗くと、ちょうど8倍の拡大鏡になります。また、AH40mmの天体用接眼鏡として使うときは、最上段の写真の⑤から③を外し、さらに②から③を外します。すると、③にねじ込まれた④が現れますので、③から④を外します。すると、中段の写真のようになります。つぎに、③を除外して、②に④をねじ込みます。そうすると、最下段の写真のようになります。これがAH40mmの天体用接眼鏡です。
五藤光学が、天体望遠鏡を作りはじめた昭和初年から30年ごろまでは、どこの小型天体望遠鏡にも、例えば海外でいえばカール・ツァイスとかエミール・ブッシュ、国内では日本光学のものにも、必ず地上用接眼鏡が付属していました。当時、天体望遠鏡は非常に高価なものでしたから、夜に星を見るだけではもったいないので、昼間に周りの景色を楽しむことができるように、地上用の接眼鏡が付属していたのです。しかし、それに拡大鏡の機能や天体用接眼鏡の機能を付加したのは、五藤光学の製品だけです。
ある機能の製品に、もう1つあるいは複数の機能を付加して、より魅力的な製品にするというのは、五藤齊三氏の得意とするところです。例えば、『望遠鏡最初の付属品』のところで紹介した「太陽投映機」や「組み合せ式接眼鏡」、「星・太陽両用ダイヤゴナル・プリズム」、「望遠顕微鏡」、今回の「地上用接眼鏡」などがそれです。
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