連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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戦後の「コメット号」 8/12
~数奇な運命を辿ったダイアナ号とコメット号(その2)~

更新日 2014.10.16

戦前のものは、石突の代わりに真鍮の棒が入れてありましたが、戦後のものは板を2枚合わせたようになっているので、棒を入れるわけには行きません。従って、先端はそのままです。
付属品は、昭和23年7月改訂のカタログによれば、
  ハイゲン式H10~20mm天体用接眼鏡 1個
  地上用接眼鏡T30~AH40mm 25× 1個
  天頂用プリズム 1個
  サングラス 1個
  堅牢木製三脚 1個
  格納箱 1個
  定価 7,200円、 荷造費 200円
となっています。
天体用接眼鏡と地上用接眼鏡については、前に説明した通りですが、その説明書きが格納箱の蓋の裏に貼ってあります。

(写真)戦後のコメット号の格納箱の裏に貼られた説明書

↑戦後のコメット号の格納箱の裏に貼られた説明書

それから、この天体望遠鏡は、購入された時期が昭和25年11月20日と明確に分かっておりますので、名板には株式会社の文字がないはずです。何故ならば、五藤光学が株式会社だったのは、戦前は昭和13~17年の間、戦後は昭和30年以降だからです。

(写真)戦後のコメット号の格納箱に貼られた名板

↑戦後のコメット号の格納箱に貼られた名板

ところが、ご覧のように見事に「株式会社」の文字が入っています。これは何故でしょうか。普通、名板のようなものは、数10枚~数100枚といったロットで作られます。従って、余っている古いものを使うとこのようなことが起こります。しかし、今回の場合はちょっと違うようです。名板の四隅をよく見ると、飾り釘の周りの透明ラッカーが剥がれ落ちています。これは、一度剥がされ再び貼られたことを示します。おそらく、格納箱から名板が失われていたので、誰かが後から貼ったものと思われます。どうして、そのようなことがなされたのかは不明です。

(写真)戦後のコメット号の付属品

↑戦後のコメット号の付属品

天体用のハイゲン式の組合わせ式の接眼鏡、地上用接眼鏡、天頂用プリズム、サングラス等の社名は、まだ≪GOTO KOGAKU≫と彫刻されていて、白色の塗料が入れてあります。
「ダイアナ号」は、対物レンズの口径が42mm、41mm、36mm、58mmと時代によってまちまちで、架台と三脚も野外用から卓上型に変わりまた野外用に戻るといったように忙しい限りです。これに対して、「コメット号」は、対物レンズの鏡径が41mmから42mmに代わりましたが、その他はあまり大きな変化はありません。ところが、昭和26年頃から様相は一変します。

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