連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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戦後の「コメット号」 9/12
~数奇な運命を辿ったダイアナ号とコメット号(その2)~

更新日 2014.10.22

『天文と気象』に現れたスバル号

『天文と気象』の昭和25年(1950)9月号と昭和26年(1951)2月号、4月号、6月号の4冊を盛岡天文同好会のO氏からいただきました。一冊がわずか30数ページの薄いもので、もともとは大阪電気科学館に勤務していたS氏の所有だったものだそうです。そのうちの、昭和26年4月号と6月号の裏表紙に、つぎのような五藤式天体望遠鏡の広告が掲載されています。

(写真)『天文と気象』昭和26年4月号の裏表紙の広告

↑『天文と気象』昭和26年4月号の裏表紙の広告

お馴染みの、コメット号やウラノス号の他に、スバル号1型、スバル号2型、スバル号3型、カストル号と言った、聞き慣れない愛称の天体望遠鏡がたくさん並んでいます。下の方に〔注〕があり、
AA=経緯台(Sは微動付)、ME=単軸赤道儀(Sは微動付)、D=口径、A=天体用倍率、T=地上用倍率、ZP=天頂用プリズム、SG=サングラス、SP=太陽投映機(顕微鏡投映装置付)、F=ファインダー
と略号が紹介されています。因みに、スバル号について見てみると、
(1)「スバル号1型」は、架台は経緯台式で、対物レンズの口径が42mm、天体用の接眼鏡は
  38×と75×の2種、サングラス付、定価は9,700円。
(2)「スバル号2型」は、架台は経緯台式で、対物レンズの口径が58mm、天体用の接眼鏡は
  20×~133×までの4種、地上用接眼鏡は27×、天頂用プリズムとサングラス付、定価は
  20,000円。
(3)「スバル号3型」は、架台は経緯台式で、対物レンズの口径が63mm、天体用の接眼鏡は
  23×~150×までの4種、地上用接眼鏡は30×、天頂用プリズムとサングラス付、定価は
  30,000円。
と言うことになります。この「スバル号」とは一体何者でしょうか。そこで、これらの消息を伝える資料をいろいろ探していると、昭和27年(1952)発行のカタログを見つけました。

(写真)昭和27年発行のカタログ(表)

↑昭和27年発行のカタログ(表)

ご覧のように、昭和23年7月改訂のカタログと同じデザインで、挿絵は三吋の半移動型赤道儀の代わりに、三吋単軸赤道儀のイラストになっています。そして表紙には、「戦後獲得せる特許権使用の高級機」と題して、単軸赤道儀「カストル号」、スバル号3型、単軸赤道儀「エロス号」、三吋単軸赤道儀などが紹介されています。内容は、天体望遠鏡の機種名と愛称、対物レンズの口径、接眼鏡の倍率、付属品、定価などです。

(写真)昭和27年発行のカタログ(裏)

↑昭和27年発行のカタログ(裏)

このカタログの裏面は、単にウラノス号とコメット号が紹介されているように見えますが、実は、とても重要なことが書かれていたのです。右側のコメット号の下に書かれた説明文を要約すると、
(1)コメット号から地上用接眼鏡と天頂用プリズムを除いたものを『スバル号1型』として
  発売する。定価は9,700円。
(2)コメット号の架台と三脚にウラノス号の鏡筒と付属品を使用したものを『スバル号2型』
  として発売する。定価は20,000円。
それから表紙にあるように、
(3)コメット号の架台と三脚に口径63mmの鏡筒を載せ、ウラノス号の付属品を使用したものを
  『スバル号3型』として発売する。定価は30,000円。
となります。

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