更新日 2015.2.12
これまでは、天文書や天体望遠鏡の話ばかりしてきましたが、この「ドームなび」は、主にプラネタリウムに携わる方々がご覧になるということですから、今回はプラネタリウムに関連した「星夜の逸品」を紹介しようと思います。それは、前田久吉著の『新聞生活四十年・日々これ勝負』という、わずか200ページ強の小さな本」です。奥付をみると、昭和28年4月20日発行、定価200円(地方売価205円)、発行所は株式会社創元社とあります。
↑前田久吉著『新聞生活四十年・日々これ勝負』
この本を紹介しようと思った経緯は、先日、手許の資料を整理している時に、たまたま数年前に、青森にお住まいのGさんからいただいた手紙を見つけたことによります。それには、 「・・・・・プラネタリウムと言えば、有楽町の毎日天文館で昭和二十年のお正月に野尻抱影先生のお話でカノープスを見せて頂いたのでした。その後間もなく私は志願兵として船舶隊に入り、六月末、自分の棺桶になる筈の舟艇(一トン、モーターボート、攻撃艇)を受領に船橋市海神町へ出張ついでに玉電で五藤光学の門前迄行ってひそかに五藤先生と御奥様にお別れの挨拶を捧げてお会いせずに立ち去りました。・・・・・云々」 というものでした。 ところが、そのつぎにいただいたお手紙には、 「・・・・・東日天文館の写真資料、今や貴重品だと思います。一月、此處で野尻先生の解説で天象儀の像を見て、半年後、有楽町駅のプラットホームからドームの残骸を見上げた時は悲しくてなりませんでした。学校で習った『方丈記』の文言を思い出しました。・・・・・」 とありました。 Gさんは、昭和20年の1月に有楽町の毎日(東日)天文館に行き、プラネタリウムで野尻抱影先生の解説する冬の星空を見ました。ところが、それから僅か半年後に有楽町駅のプラットホームから見たものは、東京大空襲で焼け残った毎日天文館のドームの残骸だったというのです。何という哀しい光景でしょうか。
↑東京市麹町区有楽町1丁目にあった東日会館
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