更新日 2015.9.16
以前、『吉田茂の長男健一氏の愛用した望遠鏡』のところで、ウラノス号には全部で5種類あるというお話しをしました。しかし、ウラノス号の初期型のものについては、手許に実物がなかったため、あまり詳しく紹介することができませんでした。ところが、とてもありがたいことに、その後、盛岡天文同好会のOさんから、是非、調査研究用に使ってくださいとウラノス号1型をいただきました。そこで、今回は、この望遠鏡について、少し詳しく紹介しようと思います。
『吉田茂の長男健一氏の愛用した望遠鏡』のところでも述べたように、大正15年に発売した1インチ望遠鏡の売れ行きは好調で、月に200台、300台と売れました。しかし、五藤齊三氏は、シングルレンズの望遠鏡をいつまでも作るつもりはなく、将来は8インチの色消レンズの赤道儀、あるいはアポクロマート対物レンズの赤道儀を作りたいと思っていました。従って、『天文夜話』に、「そこで色消レンズの製作は富岡光学の富岡正重氏に依頼し、またアイピースは東洋光学の鈴木泰一氏に依頼しました。その時、有効口径五十八ミリレンズをウラノス号、有効口径五十ミリのレンズをアポロン号、有効口径四十二ミリのレンズを作ってダイアナ号と命名し、三種の望遠鏡を製作したわけである。」とあります。ここでは、有効口径とあるのは対物レンズの直径(鏡径)のことです。それでは、これらの望遠鏡はいつ頃、製造販売されたのでしょうか。
↑『科学知識』昭和3年4月号
手許にある最も古い資料は、昭和3年4月号の『科学知識』に掲載された五藤光学の広告です。それには、
「世界的発明として伝えられたる
高級 五藤式天体望遠鏡 発売
太陽黒点及び顕微鏡像映写機付属
口径 二吋四分ノ一完全色消
倍率 133× 64× 32× 20×
架台 水平垂直微動装置完備
三脚 堅牢、安定、折畳、伸縮自在
付属 天頂観測装置、 地上接眼鏡
太陽黒点映写機、 格納箱
本品は舶来品にも其比を見ざる完備せる純国産高級天体望遠鏡です
定価 金百九十円 以下各種」
とあります。
↑『科学知識』昭和3年4月号に掲載された望遠鏡の写真
しかし、添付されている望遠鏡の写真をよく見ると、上記の仕様とは明らかに違います。仕様には、架台は「水平垂直微動装置完備」とあるのに、写真の架台は「単純な経緯台」です。これは、どう言うことでしょうか。
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