更新日 2015.10.21
また、最近の小型天体望遠鏡の対物レンズ枠には、メーカーによって多少の違いはありますが、対物レンズの有効径や焦点距離、社名などが彫刻されています。
しかし、ウラノス号1型の対物レンズ枠には、そのような彫刻は見当たりません。
ところで、このウラノス号1型をいただいた盛岡のOさんは、小型天体望遠鏡がどようにして誕生し、どのように発展していったのかを、実物を収集し、科学雑誌の広告やカタログなどを基に、その成り立ちを調査研究している方です。そのOさんが、ウラノス号1型の対物レンズ枠の側面に、「所究研学光藤五」と彫刻されていると教えてくれました。そこで、この望遠鏡をいただいた時、いの一番に、鏡筒から鏡筒枠をはずし、対物レンズ枠をはずして、その側面を見ました。ありました! 確かに、対物レンズ枠の側面に、右から左に「所究研学光藤五」と楷書体で彫刻されています。
↑対物レンズ枠の側面に彫刻された社名
天体望遠鏡を購入し、星の観測を楽しんでいる一般の人々は、鏡筒から鏡筒枠をはずし、さらに鏡筒枠から対物レンズ枠をはずすようなことは、まずしないでしょう。私たちのように、望遠鏡を一つ一つの部品にまで分解し、寸法を測り、重さを測定して調査をする者でなければ、一生見ることのないところに、なぜこのような彫刻をしたのでしょうか。
仏像などを彫刻する仏師が、満足できる素晴らしい仏像ができたとき、密かにその胎内に自分の名前を彫ったりするといいます。五藤齊三氏は、はじめて色消しの対物レンズを作った嬉しさに、つい、自分が設立した社名を彫ったのではないでしょうか。これは、ウラノス号1型だけの特徴です。
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