更新日 2015.12.24
『科学知識』昭和3年4月号に掲載された広告の、倍率のところに、133×、64×、32×、20×とあり、また、付属品のところには、天頂観測装置、地上接眼鏡、太陽黒点映写機、格納箱とあります。
≪接眼鏡≫
ウラノス号1型の対物レンズの焦点距離は800mmですから、倍率で割ることによって接眼鏡の焦点距離を知ることができます。また、昭和5年のカタログのウラノス号の説明文に、
「接眼鏡ハ「ミッテンズウェー」型ヲ備ヘ視野特ニ広大鮮明ナリ。」
とありますので、付属の接眼鏡は、HM6mm、HM12.5mm、HM25mmで、それに20×というのは地上用接眼鏡の倍率ですからT40mmということになります。
↑ウラノス号1型に付属していた接眼鏡ほか
普通、接眼鏡のキャップには、型式や焦点距離、社名などが彫刻されていますが、ご覧のようにウラノス号1型に付属していたという接眼鏡には、何の表示もありません。従って、どの接眼鏡が何かさっぱり分かりません。そこで、それぞれの接眼鏡の焦点距離を測ってみることにしました。
接眼鏡などの焦点距離を正確に測定するには、「焦点距離測定装置」を用いて、ノーダルスライド法によって測ります。
↑焦点距離測定装置
しかし、そのようなものがありませんので、簡易的な方法で測ることにしました。
接眼鏡の焦点距離は、6mm、9mm、12.5mm、25mmというように決まっておりますので、概略の値が分かれば焦点距離が何ミリか、おおよその見当がつくからです。
ところで、天体望遠鏡に接眼鏡をつけて覗くと、「像」を見ることができます。しかし、接眼鏡を通して像が見える範囲は限られていて、そこに眼をもって行かないと正しく見ることができません。その位置を「射出瞳」といいます。この射出瞳は、接眼鏡から少し離れて見ると、小さな白い円として見ることができます。
↑射出瞳
天体望遠鏡に光を入れると、接眼鏡を通過した後、必ず射出瞳と呼ばれるところを通ることが分かります。つぎの図は、中心像(薄青色)と周辺像(薄赤色)の光線を模式的に描いたものです。接眼鏡で作られた中心像と周辺像のそれぞれの光線は、射出瞳と呼ばれるところで交わった後、次第に広がって行くのが分かります。このことから、射出瞳のところに正確に眼を合わせないと、視野全体が見えないことが分かります。ところが、図からも分かるように、対物レンズの有効径と射出瞳径の比が、対物レンズの焦点距離f1と接眼鏡の焦点距離f2の比になっています。従って、接眼鏡の焦点距離f2は、
f2=(f1×射出瞳径)÷対物レンズの有効径
で求められることになります。
↑射出瞳の位置
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