更新日 2016.5.30
≪接眼部≫
鏡筒部の最後は「接眼部」です。「乙号」の接眼部は、木製で、合焦システムは引き抜き式でした。これに対して、「甲号」の接眼部は、金属製で、合焦システムはラック&ピニオン式なっています。
↑1インチ望遠鏡「甲号」の接眼部各部の名称
接眼部金具は、鉄の鋳物で、外装は黒の半艶塗装です。ドローチューブは、真鍮製で、外装はニッケルメッキです。ヘリカルラックは、ドローチューブに直に切ってあります。従って、ヘリカルラックとピニオンの噛合わせは、ピニオンメタルカバーの取付けネジの締め具合によって調整します。接眼スリーブは、ドローチューブの内側を24.5φに削って、接眼鏡が入るようにしていますが、生憎、摺割りが切ってありませんので、接眼鏡によってはスムーズに入らないものもあります。因みに、接眼部の重さは、1,105gです。雑誌の広告っでは、ピニオンハンドルが見えるように、「甲号」の挿絵は右向きに変えられています。
↑左:1吋望遠鏡「乙号」の挿絵、右:1吋望遠鏡「甲号」の挿絵
ところで、「甲号」の最大の特徴は、接眼部金具に下記のような名板が付けられていることです。土星のマークで、英文で「Goto’s Telescope」とあり、その下に、「東京市神田区錦町 科学画報代理部発売」、さらにその下に、「東京市外駒沢町 五藤光学研究所製作」とあります。
↑1インチ望遠鏡「甲号」の接眼部に取付けられた名板
対物レンズについて、五藤齊三氏の『天文夜話』に、「最初は日本光学に頼んで三十ミリの単レンズを有効径二十五ミリ(一インチ)FL八百にして使った。」とあります。このまま解釈すると、鏡径が30mmのレンズを有効径25mm、焦点距離800mmにして使用したとなりますが、測定したところ、「甲号」の対物レンズの鏡径は28mmでした。
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