更新日 2016.6.27
≪接眼鏡≫
1インチ望遠鏡「甲号」の当時の雑誌広告を見ると、「全部金属製(サングラス、庭園三脚付)」とか、「アイピース微動装置附」などとあります。また、1インチ望遠鏡の「説明書」に接眼鏡については、
「接眼レンズは本式ラムスデン型で、視野極めて平坦鮮明であるのみならず、金枠は標準型ですから、他の高級天体望遠鏡の分と共通自在です。接眼鏡一個でも在来のものは十数円致しますが、本品は之等と少しも遜色はありません。在来の高級望遠鏡へも立派に使用する事が出来ます。」とあります。
しかし、「甲号」の接眼鏡に限っては、型式がラムスデン式であることは分かりますが、焦点距離が何ミリなのか、倍率が何倍なのかという表示は、「説明書」にも雑誌広告にも全くありません。ただ、「乙号」の雑誌広告に「五十倍アイピース一個」とあるだけです。「甲号」の接眼鏡もこれと同じものとすると、対物レンズの焦点距離が800mmですから、800mm÷50倍=16mmで、接眼鏡の焦点距離が16mmと推測されます。
↑1インチ望遠鏡「甲号」に付属のラムスデン式の接眼鏡
そこで、前回の「幻のウラノス号1型」のところで紹介した、射出瞳径を測定して計算する方法で焦点距離を求めたところ、20mmでした。しかし、これだけではこの接眼鏡が「甲号」に付属していたものではないかも知れません。そこで、先に紹介した1インチ望遠鏡の「野外用」のものと、五藤光学が所蔵している「普及型」のものも、同じ方法で測定して焦点距離を求めてみました。すると3種類の接眼鏡とも20mmでした。その結果、1インチ望遠鏡に付属していた接眼鏡は16mmではなく、ラムスデン式の20mmであったことが、80数年振りに明らかになったのです。
↑1インチ望遠鏡「甲号」付属の接眼鏡の部品
上の写真は、「甲号」に付属していたR 20mm接眼鏡を分解したものです。左から、キャップ、バレル、眼レンズ、間隔筒、視野レンズ、レンズ押え環です。ここで驚くのは、バレルが真鍮の丸棒から削り出しで作られていることと、間隔筒は黒のラシャ紙でできているということです。びっくりしました。
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