連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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いろいろな方位磁石 4/5
~学習用のコンパスから江戸時代の航海用のコンパスまで~

更新日 2017.11.20

逆針・裏針の和磁石

方位を時計回りに配した普通の和磁石を本針(ほんばり)とか正針(せいばり)といいますが、実はこれとは逆に方位を反時計回りに配した和磁石があります。

(写真)(左)12方位の本針or正針  (右)12方位の逆針or裏針

↑(左)12方位の本針or正針  (右)12方位の逆針or裏針

これを、逆針とか裏針といいますが、、どのように使われたのでしょうか。日本人は、江戸時代の初期には、タイやベトナム、マカオなどと交易をしていました。従って、天体位置表のような太陽表とアストロラーベを使って太陽を観測し、自分の船の位置を知る航海術がありました。ところが、寛永16年(1639)の鎖国令によって海外貿易が禁止されると、航海術は衰退の一途をたどります。そして、江戸の後期には、陸地を見ながら沿岸を走り、夜には近くの港に停泊するといった「地見航法」に戻ってしまいました。この頃に使われたのが、この逆針or裏針の和磁石です。

(写真)和磁石(逆針or裏針)の使い方

↑和磁石(逆針or裏針)の使い方

つまり、和磁石(逆針or裏針)の「子(北)」と書かれた方を、船の進行方向になるように設置すると、上図からも分かる通り、磁針の北の先が指している方位が、船の進んでいる方位になるというわけです。
しかし、この航法では、波が穏やかで見慣れた沿岸の景色が常に見えている時は良いのですが、一旦、時化となって海が荒れると大変です。雨と風で沿岸の景色が見えないので、船がどこにいるのか分からなくなってしまいます。幕末に難破して漂流する船が多かったのは、船の構造もありますが、ほとんどこのためです。

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