更新日 2018.4.2
前回は、戦前のコメット号の格納箱を紹介しましたが、今回は、戦後のコメット号の格納箱を紹介します。このコメット号は、有効径が40mmで焦点距離が750mmの、製作年月が分かっているめずらしい望遠鏡です。昭和25年に製作され、その年の11月25日に納入、翌26年に最終ユーザーに寄贈された望遠鏡です。それでは、早速、格納箱に貼られた銘板を見てみましょう。
↑戦後のコメット号の格納箱に貼られた銘板
富士山の中に月のあるGOTŌ のマークの右に、
東京 世田谷 株式会社 五藤光学研究所
とあり、その下に特許の番号が並んでいます。
前回も説明したように、五藤光学が株式会社だったのは、戦前は昭和13年~17年までで、戦後は昭和30年~現在までの間です。従って、昭和25年は株式会社ではありませんでした。
また、マークのGOTOの文字が“GOTŌ ”だったのは、昭和28、29年の2年間だけです。それ以前は、GOTŌ のところが “ZEUS”となっていました。それでは、何故、昭和25年に作られた望遠鏡の格納箱に、このような銘板が貼られているのでしょうか。
もう一度、銘板をよく見ていただきたい。普通、銘板には腐食したり、傷ついたりしないように、透明なラッカーが塗ってあります。銘板の表面が、わずかに黄色味がかっているのは、透明なラッカーが経年変化で変色したためです。ところが、銘板の四隅の飾り釘の周りをよく見ると、そこだけラッカーが剥がれて白くなっています。これは、望遠鏡を廃棄処分するときに剥がされてなかった格納箱に、後で他の箱から剥がした年代の違う銘板を、再びこの箱に貼られたためではないかと推測されます。こうでも考えないと、説明がつかないのです。それでは、格納箱を見てみましょう。大きさは、縦14cm、横82cm、高さ14cmで比較的小さな格納箱です。これは、三脚の足が直脚で箱に入らないためです。
↑顕微鏡の小物や部品の収納方法
細かな各部の寸法は、つぎのようになっています。
↑格納箱の各部の寸法
厚さが11~12mmの板が使われていて、とてもしっかりした箱ですが、長年放置されたためか、蓋の両端が大きく上に反り返っています。表面に塗られているニスは、茶色ではなく黄色味がかった色のものです。
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