更新日 2018.6.4
昭和23年(1948)5月9日の金環日食は、金環-皆既日食と言われるものです。これは、日食中心線上で皆既食に近い金環食となるためにこのように呼ばれます。
↑オッポルツェルの食宝典 151図
この日食の状況は、オッポルツェルの食宝典によれば、食の中心線はインドの南モルジブあたりから始まり、スリランカ、タイのバンコク、中国の上海、韓国、日本の礼文島を通って北太平洋に抜け、アメリカの西の太平洋上で終わります。
↑萩原雄祐編『日食』恒星社発行
上に掲げた本は、恒星社厚生閣が昭和25年8月に再版として発行した、天文学叢書2の萩原雄祐編『日食』です。因みに、初版は昭和23年4月の発行です。随分前のことになりますが、調べたいことがあり是非この本が欲しかったのですが、既に絶版になっておりました。そこで、ダメもとで出版元の恒星社に直接連絡したところ、何と一部だけ残っているということで、発行当時の価格100円で分けていただいたものです。
この本の付録1に、当時、東京天文台の技官だった佐藤友三氏が、「昭和23年5月9日の金環食」と題して詳しい予報を載せています。
↑佐藤友三氏の記事
それによれば、
「此の日食の特徴は、月が殆ど太陽面を蔽うことで、換言すれば本影錐の頂点が地表面に近い。従って金環食の南北限界の幅は狭い。又それ故中心線上に於ける金環食の継続時間も短く最大でも1分足らずで、東経132°46.8′、北緯40°50.8′(時刻は11h 30m頃)の地点では0.1秒である。」と述べた後、時間経過とともに、本影錐の頂点と地表との距離が次第に近くなることを記しています。そして、
「以上の結果は予報の時述べたことであるが、ベッセル要素を求める際に月、太陽の位置推算に対し補正する(実際太陽の平均黄経に+1.0″、月の平均黄経に-1.5″、月の黄緯に-0.5″を補正した)その補正量は正しい値に近いかも知れないが、正しい値そのものとは云い得ない。故にこのベッセル要素の整約した状況は実際と多少ちがってくることも考えられるから、11h 30.8mの近くでは、継続時間の短い皆既食となるかも知れない。
礼文島に於ける状況は、中心線は同島の西海岸ウエンナイ辺を通り、やや北東に進んで東海岸の起登臼の辺で海に抜ける。これを中心に挟んで、夫々600m位の幅に含まれる範囲が金環食の見える範囲であって、詳しいことを示すと第3表に示す様になる。
もし月の平均黄経に加える補正量を絶対値で約2倍にすると、中心線は北方へ約900m近く移る。」と述べています。そして、
「第二次大戦で、世界各国の天文観測の結果が、各国の間に交換されていない。それ故使用した補正量は、数に於いて不充分な観測結果から求められているのではないかと云う心配もあるから、或は結果は実際と予想以上に食違うかも知れない。」とも言っています。
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