連載 星夜の逸品 -児玉光義-

ドームなび GOTO投映支援サイト

礼文島の金環日食 4/5
~昭和23年5月9日の金環日食の中心線変更“南に500m下がれ”~

更新日 2018.6.26

広瀬秀雄さんの説(2)

このようにして得られたデータや、子午環による観測結果などを参照して、日食の時の月の狂いを推定し日食を予報するので、普通数秒まで精密に予報できるのですが、この推定が正しいかどうかを知るためにも、また、次回の日食のためにも、直接現地で月位置の狂いを測定することが必要なのです。もちろん、現地に子午環を持って行くことはできませんので、食の始めと終わりの時刻を測って、今度は星の代わりに太陽が月に隠されるのを見るわけです。
太陽は大きさをもっているので、欠け始め、欠け終り、出始め、出終わりが見られ4時刻のデータが得られるのです。しかも、直接位置の基準となる太陽と比べるのですから、日食は、子午環観測や掩蔽観測の結果とともに、月の運動に関する重要な手掛かりを与えてくれるのです。それでは、月の運動はどんな重要性を持つのでしょうか。
月は、規則的に観測できる地球に一番近い天体です。従って、小さな原因による小さな運動の不等でも検出することができます。しかし、月の運動には、理論では説明のできない事がたくさんあります。月の運動の重要な問題の一つに「長年加速度」の問題があります。これは、地球を廻る月の平均運動が、100年につき約10秒速くなる現象で、1693年(本文には1695年とあるがこれは間違い)にハレーが見つけたものです。その後、ラプラスが地球の軌道が次第に円くなることによると説明しました。しかし、この理由によって起こる長年加速度は5秒だけでした。残る5秒は、地球上の海水が潮汐として地球の自転にブレーキを掛けるためと考えられています。

(写真)第2図 月の位置の狂い

↑第2図 月の位置の狂い

長年加速度の原因による部分は、理論で考えられている時間は一様に流れるものと考えられています。従って、われわれが考える時間は、地球の自転回数を積算して得られるにすぎません。ところが、N恒星日の間隔と我々が考える時間は、最初の時の恒星日のN倍よりも長くなります。長年加速度は、この長くなった時間に相当する天体の進みですから、全ての天体運動に一様に反映するはずで、このことは観測上確認されています。
ところが、この長年加速度を取り除いた月の位置には、なお第2図のような狂いが残っています。

< 3.にもどる 5.にすすむ >

このページのトップへ