更新日 2018.7.4
↑第3図 最近百年間における月・太陽・水星の位置の狂い
その一部分を拡大して描いた第3図には、公転角運動の比に拡大したほか、天体の同様な意味の位置の誤差が重ねて書いてあります。いずれも細部まで相当よく一致しているから、第2図の月の位置の短期間変動も、やはり地球の自転の変動に帰し、わずか1年乃至数年の間に突然自転速度が変ると考えられます。
↑各回の変動に対する地球自転周期の違い
第2図の長期間を通観すると、この図の表わす狂いは8個の折れ線で表され、その各回の変動に対する地球の自転周期の違いは上の表にようになり、これによれば1784年頃、1864年頃および1897~1917年頃に生じた変動はかなり大きいので現在の天文時計、特に近頃発達した水晶時計などでは検出し得る程度に達しています。
近年の掩蔽観測から求めた月の位置の理論からの狂いの年々の平均値は、第4図のようになり、全世界の観測から求めた値は1935~37年に急変を示しているようですが、最近の資料がないので、その後の様子ははっきりしません。
↑第4図 近年の月の平均経度の狂い
しかも日本の観測は運悪くその頃のものが得られないので外国の観測の結果が日本の結果につながるのか、または図の点線のように、日本のものと平行に差があるのか明らかでないので、本年5月9日の日食に対する月の位置の予報には一抹の不安があります。この平均値に1年周期の変動を加えて、日食当日の月の位置の狂いの推定値が得られます。
日本の掩蔽観測の結果だけから推定すれば、本年5月の日食に対して月は天体暦に対し平均経度で-0.00秒、緯度で-0.72秒、狂っていると考えられますが、上述の平行不一致が実在するなら、平均程度(平均経度の間違い)の狂いは-1.29秒となります。
礼文島の予報中心線の位置は、平均経度の狂いを-1.5秒、緯度の狂いを-0.5秒と考えて得られるのであるから、中心線は最大数百米南へよることもあり得るのです。そして、最後に(筆者は東京天文台技官)と記しています。
萩原雄祐博士は、先に紹介した『星座の縮図』の中で、つぎのように述べています。
「東京天文台の研究によると、北海道礼文島の金環日食の見える地帯が、今までの理論による計算と比べて南へ五百メートル位ずれる。これは米国地理学会の企ての結果を予想するものである。かくして日本は国際的研究において一歩欧米に先んじたのである。」
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