連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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落札してから調べよう 3/3
~2017年10月にヤフオクに現われた謎の鏡筒とその格納箱~

更新日 2018.12.3

落札してから調べよう

ところで、ヤフオクに掲載されている写真だけでは、接眼部のドロチューブが失われてないのではないかと見間違えたように、この望遠鏡の鏡筒がどのようなものか、詳しいことは分かりません。実際、この時点では、格納箱は昭和13年よりも前に作られたもので、望遠鏡の鏡筒は別のメーカーのものと考えていました。
H.S.さんも、カートン製の望遠鏡と似ているということで、カートンの古いカタログをいろいろ調べてくれましたが、確証を得るところまでは行かなかったようです。
そこで、安ければ落札して、後でゆっくり調べるというのはどうでしょうかと、H.S.さんに提案しました。
そして、私が入札して、運よく落札できたら格納箱を私がいただき、鏡筒は天体望遠鏡博物館の担当者の方に差し上げるということにしました。早速、いつもヤフオクの入札をお願いしている友人に連絡したところ、今日は体調が悪く会社を早退されたということでお願いできませんでした。そこで、再度H.S.さんにお願いして、そちら方で入札していただくことにしました。
私は、五藤光学の銘板の貼られた格納箱が欲しいので、私が主導で入札する場合は、格納箱に出せる金額+αという入札限度額になります。ところが、天体望遠鏡博物館の担当者の方が主導で入札する場合は、鏡筒に出せる金額+αが入札限度額になりますので、おのずと入札限度額が違ってきます。そこで、私が格納箱に出せる金額を、落札価格の大小に関わらずに支払うことにし、天体望遠鏡博物館の担当者の方で、それに鏡筒に出せる金額をプラスして入札していただくことにしました。誰でも、粗末な格納箱よりも口径55m の鏡筒の方が価値があると思うでしょうから、こうした方が落札できる確率が高いと考えたからです。
その後、H.S.さんから実際にヤフオクに入札していただく、天体望遠鏡博物館の担当者のK.N.さんを紹介していただきました。
ただ、ヤフオクの標題に、「五藤光学研究所 アンティーク天体望遠鏡 ジャンク/ウラノス号? コメット号?」とありますので、ちょっと心配になりました。五藤式天体望遠鏡は人気があり、特別なマニアの方もおられるようなので、落札価格が高騰するのではないかと心配したのです。
しかし、その後のK.N.さんのメールによりますと、最後の30分間は二人のバトルになりとてもとても疲れましたが、その甲斐あって何とか落札できたということです。K.N.さんには大変なことをお願いして、申し訳なく思うと同時にとても感謝しています。
そこで、早速、K.N.さんと格納箱の代金の振込等について、メールのやりとりをしました。しばらくすると、K.N.さんから現物が届いたとのメールがあり、中身を検めてから格納箱を送ってくれるということでした。そして、10月16日にいただいたメールから、つぎのようなことが分かりました。
① 対物レンズ枠と接眼部は、アルミ製で黒色の塗装がなされている。
② 対物レンズの鏡径は58mmで、有効径が55mmである。
③ 対物レンズは、清掃すると綺麗になった。
④ 対物レンズ枠と接眼部を除いた、鏡筒の白い部分の長さは715mmである。
⑤ 鏡筒は、ブリキを丸めて筒状にしたもので、内部には黒の艶消し塗装が施されていて、絞り環が2枚入っている。
⑥ ドロチューブは付いているが、接眼鏡を固定するクランプ用の小ネジが失われている。
⑦ 全体的に丁寧な仕事ぶりで、とてもダウエル製には見えない。
そして最後に、「何となく児玉様が“星夜の逸品”に書いていた、昭和23年頃のダイアナ号に思えてきました。ブリキで作った鏡筒バンドも、物資不足のなせる業かも知れません。」とありました。
K.N.さんのこの言葉を聞いて、格納箱に貼られた銘板ばかりに気をとられ、鏡筒は他社の製品だろうとあまり関心を示さなかった自分を悔やみました。
そういえば、昭和27年頃、鏡径が58mmで焦点距離が800mmのウラノス号の鏡筒を、コメット号の架台に載せたものを「スバル号2型」として、低価格で販売したことがありました。下に掲げた、昭和27年発行のカタログの右側下半分の説明文を参照してください。

(写真)昭和27年発行のカタログ

↑昭和27年発行のカタログ

また、昭和23年発行のカタログにあるダイアナ号の鏡筒も、あるいはウラノス号の鏡筒の廉価版かも知れません。下に掲げた、昭和23年発行のカタログの左側下半分の説明文を参照してください。

(写真)昭和23年発行のカタログ

↑昭和23年発行のカタログ

私は、K.N.さんに、「私には格納箱だけ送っていただければいいですよ」と既に連絡していました。しかし、私には、鏡筒の現物をちゃんと見て、詳しく調査をし、この望遠鏡の鏡筒がどこのメーカーによって、いつ頃作られたもので、何という望遠鏡のものかということを、きちんと報告する責任があるのではないかと悔やみました。
ところが、H.S.さんが、「鏡筒は、児玉さんにも見てもらった方がいいよ!」と言ってくれたということで、ありがたいことに、K.N.さんから鏡筒も一緒に送っていただきました。

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