連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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構造から見た謎の鏡筒 3/3
~2017年10月にヤフオクに現われた謎の鏡筒とその格納箱~

更新日 2018.12.25

回転焦点調節装置の接眼部

つぎに接眼部です。
昭和23年のカタログの天体望遠鏡名の下に、
「優良色消58粍対物鏡及回転焦点調節装置付」
とあります。
この「回転焦点調節装置」というのは何でしょうか。五藤式天体望遠鏡の焦点調節装置は、1インチ望遠鏡の「乙号」や「野外用」のように、接眼部が木製のものは別にして、ほとんどが「ラックピニオン方式」です。もちろん、ウラノス号の合焦システムも、ラックピニオン方式のものです。

(写真)ウラノス号4型のラックピニオン

↑ウラノス号4型のラックピニオン

これは、素晴らしい焦点調節方式です。しかし、部品の製作に高い精度が要求されますし、調整に手間もかかります。そこで、回転式にしてコストダウンを図ったものと考えられます。
それは、先に述べた「五藤式40×~80×天体望遠鏡『組立キット』」と同じ方式のものです。ただし、材質がエボナイトではなくアルミが使われています。

(写真)五藤式40×~80×天体望遠鏡『組立キット』の接眼部

↑五藤式40×~80×天体望遠鏡『組立キット』の接眼部

(写真)今回の鏡筒の回転焦点調節装置(ラチェット式)

↑今回の鏡筒の回転焦点調節装置(ラチェット式)図

(写真)今回の鏡筒の接眼部の断面図

↑今回の鏡筒の接眼部の断面図

この合焦システムはラチェット式で、粗動はドロチューブをカチッカチッと引き抜いたり差し込んだりして行い、微動はドロチューブを左右に回転させて行います。これは、非常に簡単な機構でうまい方法ですが、残念ながら焦点調整の繊細さに欠けるのが欠点です。
それから、鏡筒もブリキを使うことでコストダウンを図ったことにより、鏡筒の保持方法も筒受けではなく、鏡筒バンドにせざるを得なかったものと思われます。

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