連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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鏡筒バンドと方位回転軸 2/3
~2017年10月にヤフオクに現われた謎の鏡筒とその格納箱~

更新日 2019.2.12

謎の鏡筒バンドと方位回転軸(2)

(写真)今回の鏡筒バンドについていた方位回転軸

↑今回の鏡筒バンドについていた方位回転軸

また、高度(上下)回転のところの蟇股(かえるまた)の幅が厚すぎて、高度回転のクランプネジを回しても、簡単に締めることができません。このようなことからも、メーカーの製品とは考え難い作り方です。
その後、この方位回転軸の材質について話題になったことがあります。ジュラルミンやステンレスではないかというのです。端の方の目立たないところを、ヤスリでちょっと削ってみれば直ぐに分かるのですが、自分のものではないのでそうも行きません。私は、そのずっしりとした重さから、真鍮ではないかと思いました。
ジュラルミンは、アルミ二ウムを主成分とした、銅、マンガン、マグネシウムなどを混ぜた軽合金で、比重は2.8です。非常に丈夫で軽いため、飛行機や車などの材料として広く用いられています。

(写真)ガーバー社製のサバイバル・ナイフ

↑ガーバー社製のサバイバル・ナイフ

上の写真は、ランボーが使うようなサバイバル用の、米国ガーバー社製のナイフです。
このような、サバイバル・ナイフの背に刻まれたぎざぎざは、戦闘中に墜落した飛行機から脱出するときに、ジュラルミン製の機体を切り裂くためのものです。
一方、真鍮は、銅と亜鉛の合金で、黄色で展性、延性に富み、細線または板、鎚打して箔とすることもできます。容易に浸食されませんので、機械や器具の製造に広く用いられます。
ところで、手許に各材料の比重を書いた表がありません。そこで、比重というのは、その物質の密度と摂氏4度で標準気圧下の蒸留水の密度との比ですから、単純に密度で比較したいと思います。ジュラルミンの密度は2.8g/cm3で、真鍮の密度は8.6g/cm3ですから、ジュラルミンは真鍮の1/3の重さしかないことになります。これは、アルミニウムの密度2.69g/cm3にほぼ等しい重さですから、方位回転軸の材料がジュラルミンと考えるには重すぎます。
つぎに、ステンレスですが、別名をクロム鋼といわれるようにクロムを含有する鋼です。クロムが2%以下のものは、工具鋼や装甲鈑用として用いられます。また、クロムが10.5%以上含む高クロム鋼は、ステンレス・スチールとして用いられています。密度は7.93g/cm3(SUS304)で、鉄の7.86g/cm3と同じくらいですが、真鍮よりもわずかに軽い材料です。しかし、非常に硬いので、当時は工作機械を使った加工には向かないとされていました(現在ではステンレスも、より硬いチタンも割合安価に加工できるようです)。
このような理由から、方位回転軸は真鍮で作られているとみて良いのではないでしょうか。また、いろいろ教えていただいた先生によれば、「ステンレスの熱伝導率は10-40W/mKで、真鍮のそれは110W/mKと大きく違うので、手にとった時のヒンヤリ感が違う。また、強力な磁石を近づけると、SUS304ならば引き合う。さらに、表面がメッキされている場合の独特の光沢等によって、瞬時に識別できる事が機械工作の入門の条件として課せられる工場もあるようだ」ということです。

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