更新日 2019.2.20
古い天体望遠鏡の製作年代を知るには、その当時発行されたカタログで調べるのが一番です。しかし、ご存知のように、カタログには発行年月の分からないものが多いようです。従って、例えその望遠鏡が掲載されていても、カタログだけではその望遠鏡の製造年代を知ることができない場合があります。
その点、定価表はいつの価格か分かるように必ず発行年月が明記されています。そこで、定価表を数多く集めて年代順に並べ、定価表の価格とカタログの価格を比較して、カタログの発行年月を推定します。
このようにして、多くのカタログの発行年を明確にしておけば、カタログを調べるだけで望遠鏡の製作年代を特定することができます。
しかし、誰でもこのような資料を簡単に作れるものではありません。そこで、つぎのような簡易的な方法を考えてみました。
五藤式天体望遠鏡の格納箱には、必ず社名とマーク、会社の所在地などを記した銘板が貼られています。
↑五藤式天体望遠鏡の格納箱に貼られた銘板
そこで、五藤光学のそれぞれの住所が使われた年代と、五藤光学が株式会社だった時期とそうでなかった時期、それぞれのマークが使われた年代等をグラフにしたのが「五藤式天体望遠鏡の製作年代特定表」です。
↑五藤式天体望遠鏡の製作年代特定表
↑戦前のコメット号の銘板
この、戦前のコメット号の格納箱に貼られていた銘板を例に、製作年代を調べてみることにしましょう。
① 所在地については、ちゃんとした住所の記載がなく、単に「東京 世田谷」とあるだけ
ですから、これは役に立ちません。
② つぎに、社名の前に「株式会社」とありますので、上のグラフから、昭和13年~16年の
間と、昭和30年~現在までの間ということが分かります。
③ さらに、マークを見ると「ZEUSマーク」ですから、昭和4年~27年の間ということになりま
す。
従って、戦前のコメット号は、②と③がダブっている期間、即ち昭和13年(1938)~昭和16年(1941)の間に製作されたということになります。
ただし、上のグラフは1年の単位で表示しているため、厳密なものではなく、天体望遠鏡の製作年代もおおよそそのような期間に作られたという程度のものと考えていただきたいと思います。