更新日 2022.2.4
↑神田茂著『彗星と流星』岩波書店
その後、昭和5年に、岩波書店から出版された神田茂著の岩波講座 物理学及び化学 宇宙物理学Ⅱ.B.『彗星と流星』の中で神田氏は、これまで「2回以上出現した周期彗星の軌道」の表を掲げている。ポンス・コギア彗星は、1818年第1(ポンス彗星)と1873年第7(コギア彗星)が、たぶん同一のものであろうと考えてのことだが、昭和3年(1928年)10月28日岩手県水沢の山崎正光氏が、また11月19日南アフリカのフォルベスが発見した彗星は、ポンス彗星およびコギア彗星と軌道が似ており、周期約27.9年のものであることが確かめられたとしている。
↑2回以上出現の周期彗星の軌道
ポンス・コギア彗星は、神田氏が「ポンス・コギア・山崎・フォルベス彗星」と呼んでもよいはずであると述べている通り、山崎フォルベス彗星のことである。
今までは、新彗星が発見されると、天文電報中央局に報告され、その報告を受けた順にアルファベット1文字を付けた仮符号と発見者名を列記して当面の彗星名とする。発見者が大勢いる場合は、発見時刻順に3名を連記することになっている。
周期彗星の場合も、予想された周期彗星が回帰した場合も仮符号が使用される。しかし、新彗星と思われていたものが、軌道を計算した結果、過去に見つかっていた周期彗星が回帰したことが判明する場合がある。
このような時は、前の彗星名と後の発見者名を列記することになっている。しかし、稀にその彗星の軌道を研究した人の名前がつけられることがある。
今回の場合も、クロンメリンがこの山崎フォルベス彗星の軌道を計算して研究し、過去のポンス彗星やコギア彗星と同一であることを明らかにした。その功績によって、後にこの彗星を「クロンメリン彗星」と呼ぶことになったのである。
従って、残念ながら山崎氏の名前のついた彗星とはならなかった。しかし、日本で最初に発見したという功績により、太平洋天文学会からドノホーメダルが授与された。こうして山崎正光氏は、日本人として最初に新彗星を発見した人になったのである。
↑若き日の山崎正光氏
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