更新日 2023.7.14
◇昭和12年(1937年)
1月3日、4日、よく晴れた。今年は雪もなく相当暖かいので、変光星の観測をなすのに楽である。この2晩で 19の星を観測す。
1月16日 変光星観測は、どれだけ長く観測すればよいかという問題。長周期では、いくらでも長いがよいわけである。長周期の星は周期が200日-400日もあるから、3-4年は続ける必要がある。
短周期でセファイドの観測は、これも3-4年を必要とする。今その例を出す。
国立中山大学天文台 第7巻 No.4
造父変星 045439 ぎょしゃ座 RX星の観測およびその光度曲線、張雲(Chang Yuin)観測は、民国21年1月29日-25年2月12日。
JD 2426736.53日に始まり、インターバルは次の通り
ぎょしゃ座RX星、
α(1855)= 4h 51m 22s δ= +39°44′
広東では、+ 39°の星は、毎年7ヶ月の間(210日)くらい見えないわけである。この半年の観測のないのでも、長い年月の観測では、立派に光度曲線が分かる。その曲線は、つぎの通りである。
張雲は、ユリウス日の取り方が違う。広東はグリニジから経度が東に7h であるから、
Gr. 1.0日 = JD = 0.5日
グリニジの 0h は、広東で 7h AIM であるからJD 0.5ではあり得ない。1/2日間違えている(書き方が)。
JJ(G.M.T.)としてあるのは、ユリウス日(G.M.T.)という意味であるが、間違った書き方である。
≪解説≫
第二部 No.1の1936年11月30日のところに、変光星はくちょう座SS星の話があり、今回また第二部No.2の1937年1月16日のところに変光星ぎょしゃ座RX星の話が出てきた。山崎正光氏は、彗星と変光星の観測が趣味である。彗星については、第一部でお話したので、ここでは変光星について話しておく。
1.変光星
夜空に輝く無数の星々の中には、時間とともに光の強さを変える星があり、それらを変光星と呼んでいる。われわれの地球は、大気に取り囲まれているから、空気が澄んでいる時とそうでない時では、見かけの光度が変化する。しかし、変光星というのは、このような大気の影響を受けない、大気圏外でも変光すると考えられる恒星のことである。
変光星の中には、光度が5等級以上も変わるものがざらにあるという。プラネタリウム的にいえば、ドームスクリーン上に直径が1mmに映っていた星が、直径が10mmの星になるということであり、明るさが100倍になるということである。
2.変光星の発見
変光星は、ある場合には光度変化が著しく、特に新星の場合は、今まで何もなかった所に突然輝きはじめる。紀元前134年にヒッパルコスがそのような星を観測してから、1等星の表が用意されることになり、光度変化の科学的な測定は、1572年ティコ・ブラヘが新星を観測し、1596年にファブリキウスがくじら座のミラ(オミクロン星=ο Cet)の周期的変化を発見したことにより始まる。
昔、変光星は他の研究、例えば小惑星の捜索中に偶然発見されたものである。変光星の系統的な捜索に、写真がとても役に立つことは、E.C.ピカリングによって示された。ハーバードに保存されていた多数の乾板は、長年に亘る多くの星の光度変化の歴史を含んでいる。ハーバードで用いている方法は、ある星野の陽画(ポジ)を、しばらく後に撮った同じ部分の陰画(ネガ)と重ねるもので、光度が異なれば2つ星像の大きさが異なるので直ぐに発見される。さらに同じ部分を何度も撮影すれば、新しい変光星も発見されるし、変光星型も分かる。変光星は、比較顕微鏡を用いることによっても容易に発見できる。
また、分光連星の光度計のよる観測は、多数の食変光星とケフェウス型変光星の発見を促進させている。
3.変光星の命名
肉眼で見える明るい恒星の名称は、バイエルンが行ったように、その星の属する星座名とギリシャ文字の組合せで表される。それぞれの星座の星の明るさの順にギリシャ文字の小文字がつけられ、オリオン座α星、ふたご座β星、おとめ座γ星などと表される。従って、それらの星が後で変光星と分かったときは、そのままの名前で、くじら座ο星とかペルセウス座β星などと呼ばれる。
これまでギリシャ文字のなかった星が変光星と分かったときは、それぞれの星座ごとの登録の順に、ローマ字のアルファベットのRからはじまり、S、T、U・・・とZまで1文字ずつつけて、アンドロメダ座R、こぐま座Sなどのように呼ぶ。ZのつぎはRRにはじまり、RS、RT、RUとアルファベット2文字をつけてRZまで行くと、つぎはSS、ST、SU・・・SZ、そのつぎはTT、TU、TV・・・TZ、最後にこの方法でZZまで行くと、つぎはAAにもどり、AA、AB、AC・・・AZ、つぎはBB、BC、BD・・・BZとつづけ、2文字の最後はQZである。ただしアルファベッ2文字の組合せの中に、Jの字のつく組合せの名前はつけないことになっている。
4.変光星の分類
変光星の変光の様子を調べるには、変光星の光度を適当な方法で連続的に観測し、その時々の光度を決定する。つぎに、方眼紙の横軸に日付、縦軸に光度をとり、時々刻々の光度をプロットして、光度の変化を表す「光度曲線」を作ることが多い。
このように、観測によって決定された変光星の光度曲線を比較調査すると、変光の型式によっていくつかの型に分類することができる。変光星の分類を最初に試みたのは、アメリカのE.C. ピカリングであるが、その後、変光星の光度変化についての資料が増加したので、いろいろな改良案が発表されている。山崎氏の時代に近い神田 清の『変光星』では、下記の7種に大別している。
1.新星および新星類似の変光星
2.はくちょう座SS型変光星
3.かんむり座R型変光星
4.ケフェイド型変光星
5.長周期変光星
6.半不規則ならびに不規則変光星
7.食変光星
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