連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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異色の天文学者・山崎正光(第二部) No.2 2/8
~日本人として初めて新彗星を発見し、日本に最初にガラス製反射鏡の研磨法を伝えた学者の生涯~

更新日 2023.7.21

 Daniel彗星
1月31日 島田町の清水氏の写真により発見。
1937年1月31日   13h 15m UT
   α=2h 18m 47s   ⊿α=-3s  光度12.5等
   δ=+17°35.8′   ⊿δ=+1′

2月15日  Wipple彗星
2月7日  9h 4.0m UT
   α= 13h 19.5m   ⊿α=+1m 18s
   δ= +35°26′   ⊿δ=+0°22′
   光度12等   尾1°以下

2月28日  Wilk彗星
2月27日  18h 25.1日
   α=0h 35.3m
   δ=+19°22′
   北東に移動

  Kozawa彗星?
3月9日の夜、名古屋の小沢喜一氏が、しし座σ星の西10′のところで、光度9.5等の彗星を発見し、その確かめを乞う電報が東京天文台から来た。

 3月12日の晩、随分雲があったが、とりあえず写真を2枚(ツイン・カメラ)撮る。
時間 10時15分-10時50分まで。
1855年分点   α=11h11m
      δ=+6°29′
において星を見る。乾板には光度8等まで写っている。彗星のようなイメージではないが、とにかく星のあることは、天文台に報告す。

 3月13日  この日8インチ反射鏡を少し磨き直す。すぐ銀を引き、晩までに使えるようになし、晩に写真Wilk彗星としし座σ星の場所を撮ってから、8インチ反射でKozawa彗星を探す。しし座σ星の場所には、彗星らしいものは見えない。池田氏も役所の6インチで探りしも見えず。

 3月15日  3月13日に撮りし写真を調べたところ、12日の物体は、北西に10′ほど動いている。 Kleinen Planeten(小惑星カタログ)から見て、小惑星187でないかと思う。ただ、光度(等級)があまりに違う。K.P.には、衝 3月13日 光度12等とある。ちょうど衝にあたり、しかも、光度が9等ではだいぶ違う。或は、変光小惑星か?

 3月13日の晩は、10時5分ごろから彗星を探す。
しし座ε星の南と思うところで、彗星のようなものに出会う。ちょっと星図で位置を調べる間に、すっかり視野から出て、いくら探しても見えず。NGC 2903 かどうか?

 4月9日
   Comet Gale 06101 April 12000 16135 12027 motion eastward 46263 Haldwin
   Stroemgren、Sekiguti
   Gale彗星   光度10等ゾラの
   4月6日 12時0分
   α=16h 13.5m   δ=-20°27′
   東に移動

これは、
   Gale彗星  光度10.1等
   4月6日   12時0.0分
   α=16h 13.5m   δ=-30°27′
   東に移動
   ハルドウィン、ストロームグレン、関口
ということである。


 5月29日  この晩、役所に泥棒が入って、自分は、
双眼鏡10円、セネカ・カメラ、ハーシェル・プリズムなどを盗られた。
本年は、晴れた晩には変光星の観測をなし、一部はハーバード大学に、一部は天文月報に出してある。

近頃の主なる出来事
    (1)4月28日  木村所長が文化勲章を頂く。
    (2)川崎氏が理学博士の学位を貰う。
    (3)ポピュラーアストロノミー5月号に、自分と五藤君の名の日食報告が出る。
    (4)自分が泥棒に双眼鏡、カメラ、太陽プリズムを盗られた。

(写真)北海道日食観測報告書

↑北海道日食観測報告書

 北海道皆既日食における五藤光学と朝日新聞社の共同観測隊の成果は、米国の「Popular Astronomy, Vol.45, No.5, 1937」に、五藤齊三氏と山崎正光氏の連名で掲載された。また、それと同じ内容の記事が、後日刊行された『北海道日食観測報告』という小冊子にも掲載されている。
 その他、ドイツの単行本に、「特殊焼付によるコロナのストリーマーの伸び方が学界初の写真として載り、また、英国王立天文学会誌に、「この度の素人の大成功は、今後我々玄人が大いに真似すべきことである」という記事が掲載された。
 また、これらの業績によって、五藤齊三氏が東亜天文協会(現:東亜天文学会)から表彰状を受けている。

(写真)東亜天文協会の表彰状

↑東亜天文協会の表彰状


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