連載 星夜の逸品 -児玉光義-

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異色の天文学者・山崎正光(第二部) No.3 7/8
~日本人として初めて新彗星を発見し、日本に最初にガラス製反射鏡の研磨法を伝えた学者の生涯~

更新日 2023.11.24

 8月17日 6月以来、始め毎日雨又は曇りで、星は見えてなかったが、今夕は8時頃からよく晴れた、先 彗星Van Gentの写真を撮る。彗星は6等星なれど頗る小さい。尾の如きものも見てない。
9時より変光星の観測をなす。露が多く、11時前には既にレンズに露が降ったので観測が出来ない。
    1855年分点    α= 12h 40.0m    δ= 37°42.7′
    T = 1941年8月17日    8時5分-8時30分

 8月18日 Van Gent彗星、目測による位置
    8月18日 8時30分
 1855年分点 α= 12h 28m 44s δ= 38°0′

 8月25日 目測によるVan Gent彗星の位置
    T = 7時35分
    1855年分点    α= 12h 28m 23.7s    δ= +39°54.0′

 8月27日 彗星発見の外電
今度から彗星発見の外電も天界8月号に山本進氏の発案せし如く日本語にて通知し来る、次の如し。
    スイセイ 一九〇九七 八ガツ
    二〇五九五 二〇四六〇 一〇四五四
    八一一二五 二〇一一二 ○○○○○
    七一八四三 デルト ストレチ・グレン
    フクミ。
即 彗星 19097 8月 20595 20460 10454 81125 20112 00000 71843
デルト氏 彗星を発見す
    1941年8月19日 20時59.5分
    α= 20h 46m 00s + 1.1s    ⊿α= +1m 12s
    δ= -4°54′     + 25″    ⊿δ= 00
    光度9等    核あり。
東京天文台回報には、⊿δを0分0秒としてある。そのようなこともあり得る。Motion direct eastの如き場合。

 9月1日 夕方より晴れた。Van Gent彗星およびDelt彗星を探せども、月明かりのため見えず。月齢10日、イメージよくない。
9時半頃より大分曇りしため火星を見るを得ず。
25cm鏡にては6月以来まだ星を見る機会なし。

 9月6日 2時、小さき日食 部分食がある筈なりしも、曇りて見えず。

 9月9日 晴れ、Van Gent彗星を探るも見えず。
9時頃に曇る。

 9月15日 夕方より晴れた。Van Gent彗星を見る。
西北地平線に近し。光度6等、彗星状を呈す。
目測による位置つぎの如し。
    T = 7時45分
    1855.0年分点    α= 11h 52m 32.4s
              δ= + 43°49.5′
 9月21日 日食日、 皆既日食は支那、漢口などを通り、台湾北部端、石垣島を通る。緯度観測所よりは服部技師と平三郎氏、8月末に台湾アジンコート島に行く。
本日は、朝よく晴れるも次第に雲が増し、時々雨降る。
始まり 12時47分。
雲を通して観測す。
12時47分50.3秒に於いて既に少しく食始まる。これより5秒も或は10秒も早く始まりしものの如し。
食甚のときも見えず。その後ちょっと晴れ間に写真を4枚撮る。位置をよく合わせる暇なく、現像すれば位置がはずれておった。
復円をも見るを得ず。
当地で日食がたとえわずかなりとも見えしは、稀らしきことである。自分が来て始めてのことである。写真
#1. 2h 5m 25s
#2. 2h 6m 21s
#3. 2h 8m 26s
#4. 2h 9m 26s
#5. 2h 24m 17s
尚、この夕、服部氏より入電。濃き雲ありたるもプログラムを行いしとのこと。
翌朝の新聞には石垣島の東京天文台班は成功なりしと。

この夜、時々晴れた。6インチ反射鏡にて彗星を探ぐりし時、α= 22h 20m、δ= -5°位の所にちょっと変わった星像を見る。彗星でないかと直ちに写真を撮る。写真は二重写しにて10時10分-10時42分まで露出。直ちに現像してルーペにて調べるに、彗星らしきものを見ず。又、天はすっかり曇り星を再び見るを得ず。
22日の朝より調べしも、何も異状なし。比較乾板l271、みずがめ座κ星の所のもの。
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星像二重写しの方法は、星を検するに都合がよい。

(写真)

 二重写しは、接眼鏡の中に図の如く線があって始め1の十字線にて15分位露出し、つぎに2の十字線にて15分位露出するのである。
8cmレンズでは幅半ミリ位となる。乾板を検するには比較板と図の如く3点になるようにすればたやすく検査が出来る。

(写真)

 もし、二重に写ってないものは星でなく、乾板のキズであることがすぐ分かる。乾板には幾個も彗星状の点が出るけれども、この方法によれば、間違うことなし。
星像の位置は、(1)を西で撮れば、(2)は東に当るのである。西、東は時計運転なきとき、星の進み方にて分かる。星の進む方が西に決まっておる。捜索用の写真は、二重露出がよい。

 11月2日 恒星時3時43分-3時47分(M.T. 平均時0時36分37秒-0時39分37秒)までに、火星が月に掩蔽(occult)したことを観測中 大宮君が肉眼で見た。20分位後に望遠鏡で見たが、月の北部に当り僅かに5分角位離れたるを見る。自分の肉眼ではとても見えない現象であった。
 11月5日 この頃、2、3回 sextant(六分儀)の観測をなすに結果不良。何の故かといろいろ調べしに、vernir(副尺)がクランプしても触ると動くことが知れた。クランプを強く締めそしてSlow motion screw(低速移動ネジ)に触らなければ動かない。

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